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佐々木美佳『タゴール・ソングス』(書籍)

佐々木美佳さんの初の単著『タゴール・ソングス』をご献本いただきました。ありがとうございます! 元となった(と言うのも変かな)映画は以前にもご紹介しました。

映画に登場した人々にまつわる、映画よりも少し踏み込んだ、少し個人的な、監督との一対一の関係性の話。そこにずっと響いているタゴール・ソングスが、詩として随所で差し挟まれる。(インドで詩と歌の境がそもそも曖昧なことはこちらをご参照ください。)

詩とはうたうもの

私には旅をするという感性があまり無く、あるとすれば、どこかへ向かう道中が私にとっての旅の美しさであり、楽しさである。たまに当てのない遠出をすると、たちまち手持ち無沙汰になるというぐらいには、旅の才能が無い。

よくインドに行っているじゃないかと言われそうだが、私にとってインドは住む場所や暮らす場所、あるいは短い期間の場合でも、何らかの目的があって滞在する場所、である。他のどの国や土地でもそれは変わらない、日本の中であっても。

だから、友人には旅を至上のものとするような人もいるけれど、正直、全然その感性は分からないし、何ならそれに関しては全く溝があると言ってもいいかもしれない。仲は良くても、それはそれ。旅人にも色々な人がいるけれど、「本当に、そこで出会う人を同じ人間だと認識しているの?」と無言の問いかけをしてしまうところがある。(でも旅好きの人に連れ回されるのは好きです。)

美佳さんは、ちょうど中間にいる人、と言えるかもしれない。ベンガルを愛し、ベンガルの人々をまるで家族のように深く愛しながら、旅人でもある。その点、読んでいるときの感覚は、櫻子さんの『インド櫻子ひとり旅』を彷彿とさせるところがあった。もっと住人寄りになると、『インドの樹、ベンガルの大地』になる。それぞれ人も違い、立ち位置まで違うと、視界に入るものも当然違う。

ここで敢えて他の本を挙げるのは、そのどれもが土地の人々への掛け値のない愛に溢れていて、『タゴール・ソングス』もその系譜に連なると思うからだ。(あと、この本が好きだった人には純粋にお勧めしたいです。ふたつともめちゃくちゃ良い本なので。あ、あとやっぱりベンガルとタゴールを愛する著者がバウルを追った、詩もたくさん紹介されている『ベンガル夜想曲』も!)

美佳さんを拝見していて、とにかく人にまっすぐに向き合うし、関わるし、面倒見もいいし、私よりも年下でいらっしゃる訳ですが、何と人間ができているんだろうと感動してしまうところがある。でもご本人は、多分ただ必死で生きていると自然とそうなってしまうという感じで、その透明さみたいなものも本書にはよく出ている。

私の場合は、バウルという伝統を受け取っているだけに、ある種の矜持を持たざるを得ないところもあるし、「気難しいと言われてもドンと来いだ」みたいな覚悟がどこかにあるけれど、彼女の素直な感性に触れると、眩しさと共に羨ましさというか、どうぞそのまままっすぐに進んでねという祈りと、確信が湧く。世界に愛される人だと思う。

何かを守ろうとする人は、その大事なものを大切にするがゆえに、時に難しくなる必要がある。これは誰しも時に、程度の差はあれ、そうなるだろう。それをより大きな人生の一部とする人もいるし、本書に出てくるオミテーシュさんもそういうところがあるように思われる。だけどそうした人も、純粋に興味を持ってくれる、外からの理解者を必要とする、あるいはそうした無邪気さを伴った存在に救われる。そこに純粋さがある限り、共有することはやっぱり喜びだから。

あまり関係ないけど、オミテーシュさんは無限の王という意味だし、オノンナは唯一無二という意味で、名は体を表すという感じだなあ、と思ったりもした。

出版記念上映会の初日に行き、そこに向かう電車の中で読了したのだけど、実は私の最も印象に残ったシーンは、三輪舎の編集者でもあり代表でもある中岡さんが読み上げたシーンと同じだった。うたと雨上がりが重なる、あのシーン(こう言うのはどこまで書いていいか分からないので、この程度にしておきます)。

あと、本書で美佳さんの『タゴール・ソングス』映画作りのきっかけが語られていたのはパズルのピースがはまるようで、私には嬉しかった。

大変恵まれたことに、ちょうど本を読み終えたタイミングで観ることができたので、また違った味わいがあった。私自身のベンガル語の向上もあったかもしれない。前回はやっぱりekla cholo re…『ひとりで進め』がとにかく耳に残ったけれど、今回は同じぐらいGramchara oi ranga matir poth…『ふるさとを離れ、赤土の道を…』が耳に残った。チットランゴダは前回も、後で覚えようと思いながらせずじまいだったので、今度こそ覚えたいな。

そうそう、美佳さんは表紙の赤い蓮とタゴールの関係性を気にされていたそうだけど、こういう蓮の花はタゴールの作った学園街であるシャンティニケトンの周辺にはよくあるので、私には全く違和感が無かった。この画↓も、シャンティニケトンのほんの近くの風景をベースに描いたものだ。


詩が好きで、詩がどのように人の中に生きているかに心惹かれる人にはおススメです。あと今読み返したら、映画『タゴール・ソングス』の感想記事が存外、読みやすかったので、映画が未見の方はよろしければそちらもご参照ください。

2月19、20日(2022年)は出版記念上映会もまだされているので、間に合う方は↓の出版社ホームページからご確認を。

タゴール・ソングス』のお求めはこちらの三輪舎のページからお問合せください。

 

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