🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

インドはインド語?

インドにいると言うと、「インド語?」と聞かれることがよくあります。
その度に私は、「さて、どう説明しよう?」と思いつつ
曖昧に微笑んで「ん〜…」とやり過ごしてしまったりします。

インド紙幣に記されているだけでも15言語あるというのは、割と有名な話かと思います。
一般的に公用語と思われているのはヒンディー語ですが、
(ヒンズー語、ではありません。
ヒンドゥー語、でもありません)
南インド諸州の反発もあり、実際の公用語は英語で、
ヒンディー語は「準公用語」の扱いです。

もっとも州ごとに公用語があり、
ヒンディー語も英語も話せない人口は相当数に上ると考えられます。
一般的に、母語の異なるインド人どうしの会話は、
北インドだとヒンディー語、南インドだと英語で行われる事が多いです。

(※このあたり、憲法や法律的には
色々と細かい定義その他があるそうですが、
ここではざっくりと割と一般的な認識と思われることをまとめています。
ご興味の方はお調べください)

出典:Maps of India

「南インド諸州の反発」と書きましたが、
インドの北部はインド・ヨーロッパ語族の言語、
南部ではドラヴィダ系の言語が話されていることがその理由です。
ドラヴィダ語族は、インド・ヨーロッパ語族とは全く別系統の言葉です。
ドラヴィダ系の言語は、タミル語、テルグ語、カンナダ語、そしてマラヤーラム語。

北部の人間に比べると、南部の人間にはヒンディー語は習得しづらく、
また、南部では北インド人やその文化を「侵略者」とみなす動きもあります。
ただし、インド・ヨーロッパ系の言葉の中でも古典語のサンスクリット語だけは例外で、
サンスクリット系の語彙は南インドの言葉の中でも大きな割合を占めています。

これらインドの言葉の中で、私パロミタが多少知っているのは、
東インド・西ベンガル州のベンガル語と、南インド・ケーララ州のマラヤーラム語です。
(どちらも、日常会話程度のレベルです)
あ、あとは英語ですね。

この2言語の歴史や特徴などをご紹介しながら、
インドの言語事情や感覚について語れればと思います。

ベンガル語の周辺

ベンガル語とヒンディー語は、言語としては親戚関係にあります。
どちらも、サンスクリット語の子孫であり、
ペルシャ語からの借用語がそれなりにあります。
これは、モンゴルに始まりアフガニスタンやイランを通って
インドに入って来た、ムガル帝国の支配による影響です。
(ムガルとモンゴル、音が似ているでしょう?)

とはいえ、ベンガル語は他の多くの北インドの言葉に比べて、
「訛っている」と感じられる響きを持っています。
たとえば、
挨拶「ナマスカール」は「ノモシュカル」に。
ヨーガは「ジョーグ」に。
太陽「スーリャ」は、「シュルジョ」に、
ベンガル語だとなります。

他の言語だと、文法など色々違う点はあるのですが、
発音がここまで違うのは少数派と言って過言ではないでしょう。
ベンガル語でも、文字を学べば綴りは同じですが、読みで訛らせる(というか、ベンガル語ではそれが正当な)のです。

それでも、訛りの法則性があるので、
私は元々サンスクリット語を学んでいたのですが、
慣れれば「さすが、サンスクリット語の子孫…」という感じがします。

更に、ベンガル語を通して、段々ヒンディー語も簡単なところなら
類推して分かるようになって来ました。
というか、私は大体「どこかのインド人」だと思われて、
ヒンディー語で話しかけられる事が多いので、
必要性に迫られて推量ヒンディー理解力が上がっています。

ベンガル人の方は、割とヒンディー語が分かる人が多いようです。
ヒンディー人口は、学ばないとベンガル語は分からないようです。

マラヤーラム語の周辺

一方、ケーララ州の公用語であるマラヤーラム語は、ドラヴィダ語族。
元々お隣タミル・ナードゥ州の一方言でしたが、
500年~1000年前頃に分離したと言われています。
タミル語に比べてサンスクリット語彙が非常に多いのが特徴ですが、
語彙もカーストや地域、宗教によって少しずつ異なるということです。

たとえば、ムスリムならアラブ語由来が、バラモンならサンスクリット語由来が多い、という具合です。
今はそのほとんどがイスラエルに移住してしまいましたが、
ユダヤ系のマラヤーラム語にはヘブライ系語彙が多く入っていたそうです。
一方、キリスト教やイスラム教の宗教用語にも、
サンスクリット語句が使用されてきたという場合もあります。

個人的には、本当に基本語彙だけを見た時には、
タミル系の語句の割合はかなり高くなるように感じます。

マラヤーラム語におけるドラヴィダ語とサンスクリット語の関係は、
日本語における大和言葉と漢語の関係に似ています。
基本的な文法は、ドラヴィダ系。
でも、そこにサンスクリット語の名詞や、名詞を動詞化した言葉がたくさん入っています。
時に、北インドよりも、古い発音や意味を残している事もあれば、
独自に意味が変化している場合もあります。

初めてマラヤーラム語を学んだ時、
「マラヤーラム語は、サンスクリット語と駆け落ちしたタミル語の娘だ」
と聞きました。
言い得て妙だと、その時は感心しましたが、今はまた少し違う印象を抱いています。
…というのも、「そんな言葉で括れるものではない」と、
強く感じるようになってしまったからです。

言葉に身を浸してみると、私のように、
膝まで屈んでかろうじて浸かった程度の者であっても、
そうした矮小な一般化には違和感を禁じえません。
そういう視点からの見解を、このブログではできるだけ提供していければと思っています。

さて、私自身は、書き文字を習わないと
言語が学べない方です。
そうしないと、まず、音が聞き取れません。

でも多分、世の中はそうではない人の方が多くて、
耳から習い、トライアンドエラーで学んでいく人が多いようです。
私はある意味で耳が不器用なだけなのですが、
結果的に「読み書きもできて凄い」と言われる事になります。

インド人も大抵、聞きながら何となく、新たな言語を学ぶようです。
そもそも共通の語彙がかなり多いので、これでどうにかなる場合が多いようです。

その中でも、マラヤーラム語は難しい、と言われています。
友人で、英語・タミル語・ヒンディー語・カンナダ語…などを喋れるタミル人が
ケーララでマラヤーラム語しか話せないリキシャー運転手と
全く意思疎通ができず、「こんな事は初めてだ!」と言っていた事がありました。

北インドの方だと、南インドの言葉に苦手意識を持っている方は多いように感じます。
以前、バングラデシュ(ベンガル語圏)から盲目の行者がいらした時、
その時はタミル・ナードゥ州にいたのですが、
「タミル語は難しい言葉だ…全然分からない…英語は単純な言語だ…」
とおっしゃっていたのが印象的でした。

逆に、ケーララ人の友人が電車でコルカタの方を通った時に
乗り合わせた紳士にベンガル語で話しかけられて、
ヒンディー語で「すみません、ベンガル語は分かりません」と言ったのに
しばらくその紳士はベンガル語で話し続け、
その話題が終わったのか、一区切りついたら突然ヒンディー語に切り替えて話しかけてきた、そうです。

「インド語」の事情というのは、こんな感じです。
少しは伝わったでしょうか。

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