🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

歌い舞うサディル、バラタナティヤムの前身〜寺社に属する女達

古典舞踊の前身、巫女の踊り

現在世界中で踊られているインド舞踊、
バラタナティヤムの前身となったのは
サディル(シャディル)と呼ばれるデ
ーヴァダーシー(神に仕える女、いわゆるところの巫女)の踊りです。

バラタナティヤムが「インド舞踊」になるまで

ムトゥカンナマル

最後のデーヴァダーシーとして
サディルを踊り、伝えているのは
ムトゥカンナマルです
(2018年の時点で79歳とする資料と89歳とする資料あり)。
タミルナードゥの南部にある
ヴィラリマライのデーヴァダーシーでした。

彼女の伝えるサディルは、歌いながら踊ります。
稽古中に踊りに気を取られて歌を忘れると
師であった父に叱られたと言います。

また、舞台のための化粧は特にせず、
ただ新鮮なターメリックを削った汁で顔を洗うと、
闇の中、オイルランプの灯りに照らされて
顔が黄金色に光ったそうです。

パトロンであった王家の財産が無くなり、
デーヴァダーシー廃止法が施行されると、
伝統的に深い関わりのあった寺院の内陣での舞台は無くなりました。
代わりに結婚式などに呼ばれる事が増え、
タミルナードゥだけでなく、隣のケーララ州など
各地に呼ばれて旅をする事になりました。

ムトゥカンナマルは、時に
主にバラタナティヤムの基礎がある人を相手に
ワークショップをしています。
その様子を捉えた上の動画には、
歌いながら踊りを踊る彼女が生き生きと写っています。

マイラポール・ゴウリ・アンマル

また、1892年生まれで1971年に亡くなった
マイラポール・ゴウリ・アンマルは
チェンナイのマイラポールのデーヴァダーシーで
現在のバラタナティヤム確立の立役者ルクミニ・デーヴィーや
最初に見出され世界中に招かれた
やはりデーヴァダーシー出身の踊り手バーラサワスワティーの
舞踊の主な教師の一人でした。

ですので、彼女の舞踊が
現在のバラタナティヤムの基礎となったと言えるかもしれません。
のちにルクミニ・デーヴィーの学校カラークシェートラの教師にもなりました。

マイラポール・ゴウリ・アンマルも歌いながら踊ったと言います。

これはバーラサラスワティーの娘婿の
ダグラス・ナイトが構成し、
孫で自身もバラタナティヤムの踊り手の
アニルッダ・ナイトがプロデュースしたドキュメンタリーです。

1:30からマイラポール・ゴウリ・アンマの映像が少し入っています。

この動画の中でラヴィ・シャンカール
(ビートルズのシタールの師匠として有名)が
バーラサラスワティーの歌唱力を絶賛していますが(02:25頃から)、
バーラサラスワティーもまたデーヴァダーシー出身であり
舞台では伴奏と共に踊りましたが、
舞台の外では自身で歌いながら踊ったのでしょう。

下の動画は本人の歌唱で踊っているそうです。

巫女から舞踊家へ

もう一つ、「サディルからバラタナティヤムへの道のり」
という興味深いドキュメンタリーを紹介します。
寺院が町中に溢れ、芸能の都でもあった
タンジャーヴールに今も残る
デーヴァダーシーの一族に取材しています。
英語のドキュメンタリーなので、何点か日本語の解説を下に設けます。

0720からはタンジャーヴールの王子のインタビュー。
古代のサンガム文学などを見る限り、
王族自身が舞踊などの芸術を嗜んだ事、
今も芸能コミュニティの一族の子孫が住み、
寺院と深く関わりながら芸能を受け継いでいる事などを
語っています。

09:45からは、19世紀初頭に南インド芸能に大きな影響を残した
タンジャーヴール四兄弟の子孫
KPKチャンドラシェーカラン(ナットワナール)のインタビュー。

18世紀から受け継いでいる一族の家や、
女性の生徒達に舞踊を教えている様子が写されています。

少し飛んで、12:45の再びのインタビューで、
昔はどの寺院にも踊り手がいたけれど、
今はもう他の伝統的な家系はいないと語っています。

11:04からは、もう一人のデーヴァダーシーの子孫
インディラ・ラージャン(ナットワナール)。
昔はサディルと言っていたのに、誰がバラタナティヤムと呼び始めたのか?
昔は米を床に撒いて、ふたりの人が両脇から一本の棒を持ち
真ん中の生徒はその棒に掴まりながら
米の籾殻が全部きれいに剥がれるまで踊らないといけなかった。
今は誰もそんな事はしない。
ヴァルナム(演目の一種)はとても遅く教わった。
などと語っています。

21:45からは、歌で門付けする女性達の映像。
彼女達はジョーガンマと呼ばれるカルナータカのコミュニティです。
舞踊こそ踊りませんが、他では廃れてしまった
デーヴァダーシーの伝統を残しているようです。
しかしこの伝統も、法制などを受けて衰退の傾向にあるとの事。

数年前、バラタナティヤムの元になった
サディルについて調べても、
あまり参考になるものが出て来なかったのですが
今は少ないながらいくつか見つかるので
インドでも注目度が増しているのでしょう。

古い形を伝える人の存在や、
動画まで見つかって、
私はとても感激しています。

家系の伝統を奪われて:バラタナティヤム

そもそも巫女舞とは何か〜インドの巫女舞と呼ぶ前に

資料(All Retreived on 4th October 2019):
The Story of a Woman Whose Lifeblood is Sathir” by Akila Kannadasan (2018)
Sadhir Dance- Forgotten Indian classical Style of dance” by Pratap RPB (2018)
The Perfect Dancer And Rukmini Devi’s First Guru” by B.M.N.Murthi (2011)

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