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校正者スンダルさんのこと

スンダルさんとは、師匠の所で出会いました。
師匠の所に行って、2回目ぐらいの時にか、
夕食にご友人と遊びにいらしていたのが最初だったと思います。

スンダルさんは、小さいというか、背が低くて小人のような
マラヤーリー(ケーララ人の事)のおじさんです。
とても繊細で、どこか女性的な人です。

政治に関心があって、風刺漫画やイラストレーションが大好きで尊敬していて、
南インド古典音楽を愛していました。
師匠の事も、師匠の旦那さんの事も大好きで、とても尊敬していました。

若い頃にオーストラリアに移住して、ここしばらくは、
インドとオーストラリアを行き来していますが、インドにいる事が多いようです。

私がスンダルさんと仲良くなったのは、単に会う機会が多かったとか、
私も南インド古典音楽を学んでいたので、その話ができたとか、
そういう事もありますが、
一番は、師匠が作っていたある本の、編集と校正の作業のお手伝いを
私が仰せつかって、一緒に仕事をした事が大きいです。

ローリー・ベイカーのデザインによるインディアン・コーヒー・ハウス

出典:トリップアドバイザー

トリバンドラム駅のすぐ前にある、
螺旋形の建物の「インディアン・コーヒー・ハウス」は当地の名物ですが、
この建物のデザインをした建築家はローリー・ベイカーという
英国生まれの建築家です。

スンダルさんは、このローリー・ベイカーによる設計のお家に住んでいました。
不思議な、吹き抜けのような構造で、
風と光が3階から1階まで反射しながら降りて来るような、そんな建物でした。

スンダルさんは、何というか古いタイプの校正者というか、
原稿を一緒に読みながら、
「おお、素晴らしい!」「いいね!」「この表現がな、くぅ…」
などと口にしながら校正や編集をしていきました。
逆に、一人だと作業があまりにも捗らないのでした。
それで、私がちょくちょくご自宅に伺って、一緒に作業をしました。

「そりゃ、そうさ、インド人は差別的だよ!」
ある日、私が多少様子を伺いながら
「インドにはもちろん大変な差別や抑圧を受けてきた歴史が
あるわけだけど、インドの多数派による、
外国人や見た目が違う人への差別に、無自覚なところもあると思う」
と言った時の、スンダルさんの反応。

「そりゃ、そうさ、インド人は差別的だよ!
一度外に出た人間は、もう外国人って事で、インド人だって認めないんだ。
アウトサイダーにして、けして身内だとは思わないんだ」
若い頃にオーストラリアに移住し、今はインドに住んでいる事が多いスンダルさん。
その時、初めて彼の、底抜けの孤独や悲しみを垣間見た気がしました。

「年齢を重ねてみないと、分からない事もあるものだよ。
悔やんでも悔やみきれない事は、どうしたって出てくるんだ」

南国の美しいケーララ、椰子の木と田んぼ、川に溢れた緑豊かな土地。
保守的だからこそ残った伝統や風景、習慣がありますが、
一方では親切な笑顔のずっと奥には閉鎖性もあり、
この土地には留まっていられなかった人、留まりながらも
戦い続けている人たちも知っています。

ローリー・ベイカー・デザインの家でスンダルさんが撮った私の写真

それからスンダルさんは、書道家バッタッティリ氏の親友であり、
支援者であり、戦友でもありました。

ケーララには書道の伝統はありませんが、
元々本の題名をデザインする仕事をしていたバッタッティリさん。
そこから、独自にカリグラフィーを発展させていき、
中国やロシア、韓国などにも呼ばれるようになりました。

バッタッティリさんは、私の師匠とも長年の友人で、
兄妹のような2人が揃うとひたすらに爆笑に次ぐ爆笑の、嵐。
スンダルさんは、そんな2人をいつも嬉しそうに見ていました。

(C)Narayana Bhattathiri

出典:entrecity.com

スンダルさんが亡くなったとの知らせを受け取ったのは、
突然のことでした。

手術のためにオーストラリアに戻っていて、
そのまま手術は成功せず、帰らぬ人になったそうです。

実は、数日前にWhat’sApp(ラインのような連絡アプリ)に
スンダルさんからメッセージが入っていました。
でも、その頃私はWhat’sAppの様々な連絡に本当に辟易していて、
返事を後回しにしていました。

それが最後になってしまうとは、思いもせずに。

おしゃべり好きで、繊細で、子どものようでもあったスンダルさん。

今も時折、彼のことを思い出します。

スンダルさんが教えてくれた、マハーラージャプラム・サンターナム。

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