🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

ケーララ北部に花咲くイスラーム芸能

イスラームと言うと、芸術の禁止、女性の抑圧など
怖いイメージを持つ方も多いかもしれません。

私がインドで出会ったイスラームは、全く違った存在でした。
もしかしたら、アラブ世界のイスラームからすれば、異端なのかもしれません。
けれども彼らの多くは真摯な信仰を持ち、心根や佇まいは美しく見えました。

ここでは、南インド・ケーララ州の
イスラーム・コミュニティに伝わる芸能をご紹介します。

マッピラの歌

「マッピラ」という言葉は、北ケーララに於いてはムスリムを、
南ケーララに於いてはクリスチャンを意味するそうです。

しかしマッピラ・パートゥ(マッピラの歌)と言う時には、
必ずムスリム=イスラーム歌謡を指します。
しかしイスラームの歌ならば何でもマッピラ・パートゥなのかというと、
そうではなく、ある特定のジャンルであると言います。

マッピラ・パートゥには、古くからの歌もあれば、
新しく作られた歌もあります。
何を以ってマッピラ・パートゥと呼ぶのかは、
文化に造詣のある友人や、私のマラヤーラム語の先生に訊いても、
ハッキリとは分からない、という結論でした。

確かなのは、イスラームの用語だとか、
アラビア由来の言葉がちょこちょこは入ってくるということ。

ケーララとイスラーム

ケーララのアラブ世界との交流は、
預言者ムハンマド(マホメット)の出現より以前からありました。

大規模なイスラームの流入・台頭は数世紀の間、起こらなかったものの、
商人の出入りから、早くから伝わっていただろうと考えられています。
12世紀から18世紀にかけて、ケーララ北部を支配した
サモリン(サムーディリ)はイスラームを奨励し、
海軍はイスラーム教徒によって指揮されました。

十分な数の兵を確保するために、ヒンドゥーの漁師の家でも、
一人かそれ以上の男子をムスリム=イスラーム教徒として育てるように
布令を出しさえしました。(p96 Sreedhara Menon)

もっとも、ムスリムといえば商人、という図式も根強いようで、
有名な小説「チェンミーン(えび)」でも、
漁村の漁師はヒンドゥー、商いをするのはムスリム、となっています。

あたいのじっちゃん、象飼ってたの」でも、
イスラーム者はみな商売をするものだと思っていたのに、
「ムスリムが農業をするなんて!」と驚く場面があります。
(バシールによる小説で、私の大・大・大好きな作品です)

また、かつては市場と言えば、ムスリム商人たちがひしめく怖い所、
というイメージもあった、とも聞いた事があります。

とにかくそのように、イスラーム・コミュニティが
一定の数と存在感をもって存在してきた、という事です。

結婚式の踊りオッパナ

この動画は、私が特に紹介したかった「オッパナ」という芸能です。
元々は結婚式で行われてきたもので、中心にいるのが花嫁(役)です。
現在はティルワーティラカリやマールガム・カリと同じように、
学生大会で踊られることが多く、とても人気がある演目です。

衣装はケーララ北部のムスリムに伝統的な巻き布カチ、
ブラウスにあたるクッパーヤム、そして頭部を覆うタッタム。
「オッパナ」には元々、「近く」「共に座る事」などの意味があります。
あるいは、アラビア語で「手のひらを合わせる」を意味する
Hafnaが語源だとする説もあります。

昔は踊り手の一人がリーダーとなって歌い、
他の踊り手が繰り返して唱和する、という形でした。
テンポも徐々に速くなっていくものでした。

歌詞は、たとえばこのようなもの。

花は色とりどりに、笑みを湛えて咲き誇る
満月は美しい花嫁のように光り輝いている
花嫁の数々の夢が今日叶う
花嫁こそが、今日のこの夜の女王

あるいは、こんな歌詞。

結婚式のある家は笑いに震えている
花婿の心は幸せに膨れるばかり
この幸せな夜に、美しい客人達が来て
夜を震わす興奮と音楽を楽しむ

かつては歌がこの芸能の中心でしたが、今は一般的に
舞踊が主眼となっています。

オッパナは、かつてはお隣のタミル・ナードゥ州でもよく踊られていましたが
今では衰退してしまいました。
ケーララでは、1950年代にいくつかの映画に登場した事から
人々の興味を引き、非常に愛される民俗芸能となりました。

現在、結婚式にプロの舞踊家が呼ばれて踊られる事もありますが、
親戚や友人達で踊る事もあります。

[参考:Fehmida Zakeerの記事”Song for the bride”]

太鼓踊りダフ・ムットゥ

これはダフ・ムットゥ。
ダフは、アラブ由来の太鼓で、今もアラブ世界で使われていますね。
これは男の子達のダフ鼓を用いた芸能です。

お祭の際などに演じられたようですが、
このダフ・ムットゥに関してはあまり情報が出て来ません。
出て来ないのですが、非常に興味深いというか、私は大好きな芸能です。


ダフ・ムットゥ進化系?

ティルワーティラカリ〜ケーララの盆踊り

マールガム・カリ〜キリスト教徒の輪舞

南インドの宝石、ケーララ州のこと

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