🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

武術がベースの舞踊劇チャウ・ダンス

数年前、インド大使館で観て
とても感動したのが、
仮面舞踊セライケラ・チャウでした。
武術的で洗練された動きと仮面、
そして何とも言えない独特の音楽。

このセライケラ・チャウ、あまり情報が出て来ません。

ベンガルには、プルリア・チャウというものがあって
始めは「似たようなものなのかな」と思ったのですが
観てみると、全然違うのです。

しかし、調べると大体、
「チャウ・ダンス」として
一つの項目で語られています。

ここでは、そんなチャウ・ダンスを3つ、ご紹介します。

チャウ・ダンス概観

「チャウ・ダンス」と呼ばれるものには
三つあって、
セライケラ・チャウ、プルリア・チャウ、そしてマユルバンジ・チャウ。
全て東インドの民俗芸能です。

正直、見た目はそれぞれ、けっこう違いますが、
一つのカテゴリーで論じられる事が多いです。

チャウの伝承される山岳地帯は
三つの州に跨っていて、
ジャハルカンド州に属するのがセライケラ、
西ベンガル州に属するのがプルリア、
オディシャ州に属するのがマユルバンジ。
それぞれ地名にならって名付けられています。

元々は「先住部族」と呼ばれるような
少数民族ですが、
12世紀以降のヒンドゥー領主の影響を少しずつ受けて
今はヒンドゥー教と分かちがたい形で
それぞれ独自の文化を持っています。
これはチャウの演目にも反映されています。

「チャウ」という言葉は
サンスクリット語で「影」を意味するチャーヤーに由来するとも
オリヤ語で「軍営」を意味するチャオニに由来するとも
あるいは、役者が入場する時や、狩人が獲物を追い詰める時に発する
「チョウ、チョウ、チョウ」という声に由来するとも
様々に論じられています。

チャウは、伝統的にはどの地域でも
一年に一度、春のチャイトラ月に行われるお祭で
演じられて来ました。

そしてこの舞踊(劇)の特徴は、
武術パリカンダParikhandaをベースにしている点です。
かつては男性のみによって受け継がれていましたが、
現在は女性も参加しています。

セライケラ・チャウ

セライケラ・チャウはジャハルカンド州側のチャウで、
様式化という意味では、
これが一番様式化されていると言える
かもしれません。

また、地域の王族が
パトロンになるだけでなく、
自身も演技や制作に参加したという点も
他のチャウとは異なっています。

1920〜1930年代、コルカタなどの都会で大学教育を受けた王族が
それまでの動物や精霊を主体とした土俗的な内容に
ヒンドゥー古典的な題材を組み入れ
音楽にもシタールやサロードなどの
古典音楽で使われる楽器を取り入れ
仮面のデザインなども洗練させました。

この時に、基礎運動である武術的なパリカンダも
徐々に変化していきました。
とはいえ、カシャプは、実際の動きを観察すると
その多くは動物や鳥類の動きを元にしており
また一部は女性の普段の動作を元にしていると書いています。

プルリア・チャウ

プルリア・チャウは西ベンガル州側のチャウです。
主に村落単位で伝えられて来たこのチャウは
非常に民衆的というか、俗っぽいというか
セライケラ・チャウとは対照的です。

1961年に人類学者に「発見」されて
各地に呼ばれるようになってから
村人たちはグループを組み
より目を惹く、「面白い」チャウにするために
戦闘シーンを増やし、仮面や被り物も
どんどん派手になっていきました。

上の動画の最後の方には獅子舞のようなものも出て来ます。
これは、たぶん、割と新しいのではないかしら。
正直、初めて見た時は爆笑しました。
それから太鼓打ちの実況?役が
ずっとマイクにまくしたてているのも、
とてもローカル的で面白いですよね。

マユルバンジ・チャウ


マユルバンジ・チャウは
オディッシャ州側のチャウです。
元々は地元のラーム・リーラー
(叙事詩ラーマーヤナを演じる劇)と
セライケラ・チャウが起源になっていると言われています。

19世紀末、土地の王族がセライケラ・チャウを観劇し
同じようなものをここにも作りたいと命じたそうです。
セライケラから二人の演者が招かれ、
3年間、二つのグループに訓練を施しました。

その後、王族がパトロンとなって
この二つのグループを競わせながら
マユルバンジ・チャウを発展させました。

20世紀に入るとコルカタなどの都市で上演されるようになり、
演者たちはオリッシーなど各地の舞踊から要素を吸収し
この時期に新たな演目や音楽要素などを取り入れました。

現在マユルバンジ・チャウでは仮面を使用しませんが
当初は仮面を使用していた記録があるので、
これはこの時期に起こった変化だと言われています。
また、仮面を無くした事で身体表現の変化も起こりました。

以上三つのチャウが、代表的なチャウです。
共通のベースを持ちながらも
多様に発展してきたという点、
日本の神楽の様相にも少し似ていて
面白いなと思います。

参考 (All retreived 9th October 2019):
Chau: The Rare Mask Dances” by Prakriti Kashyap (2001)
Stories behind the masks” by Asha Ponikiewska (2017)
ウィキペディア

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