🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

「地上のガンダルヴァ」 クリスチャン出身の大歌手イェーシュダース

イェーシュダースの歌うクリシュナ讃歌

ケーララ州の早朝、5時。
暁の時間帯に、
ヒンドゥー寺院からのクリシュナ讃歌が
近隣に響き渡ります。

これは、インドの南、西海岸にある
ケーララ州では、
どこでも見られる光景です。

しかし、このクリシュナ讃歌。
ほとんどの場合、歌っているのは
イェーシュダース

イェーシュダースとは、
「イエスの信徒」という意味。

つまり、クリスチャンの出身です。

イェーシュダースは
ケーララでは熱狂的な人気を誇り
神さまのように愛されている
「地上のガンダルヴァ」
とも呼ばれる歌手です。

ガンダルヴァとは、
天帝インドラの宮殿の楽人である
天人たちの事。
仏教には乾闥婆として伝わっています。

空を翔ける天人〜飛天、アプサラス、ガンダルヴァ

ケーララで最も権威ある寺院の一つである
グルワユール寺院
というお寺があるのですが、
これはクリシュナ神のお寺です。

バターの好きないたずらっ子〜クリシュナ神1

グルワユール寺院でも、
イェーシュダースの歌を
始終流している(らしい)のですが

ヒンドゥー以外は禁制のお寺で
イェーシュダース自身が
入った事は無いそうです。

グルワユールは、20世紀半ばまでは
アウトカースト(いわゆる穢多非人)の
入場を許さなかった寺院で

現代インド仏教の立役者である
アンベードカルの運動により
ヒンドゥーである限りは
誰にでも門戸が開かれるようになった、
という背景があります。

同じように、異教徒出身で
実力も人気もある歌手でありながら
寺院への入場が許されなかった人に
カタカリ歌手のハイデラーリがいます。

ケーララの歌舞伎?「カタカリ」

イェーシュダースの歌う映画音楽

この動画の歌は
「宗教は人類が作った」
という歌詞で、題名です。

ケーララ州は、長年
共産党の影響力が強かった事もあり
こんな歌もあります。

これは1972年の映画で使われた歌で
歌詞は大詩人ワラヤールの作。

ワラヤールの詩に
デーヴァラージャンが曲を付け、
イェーシュダースが歌う、
という組み合わせは
ほとんど黄金律だったようです。

ワラヤール自身、王族の出身でありながら
社会派の詩を書くようになった人。

他に、今も多くの人が口ずさむ歌は
たとえばこれ。

「サンガマム」
(3つの川が)合わさる所、という意味です。

これも詩、曲、歌が同じ組み合わせ。
1970年の映画です。

ケーララ映画は、
黎明期の50年代以降
社会派の映画が非常に多く作られていました。

ヒンディー映画(ボリウッド)でも
「デーヴダース」という
何度もリメイクされている作品がありますが

ああいう感じの、
身分差の恋や、お見合い結婚などに絡めて
社会や人間について問題提起するような
筋書きの作品が多いです。

また、ケーララ映画については
民謡調の旋律を取り入れている
という事が、この頃は
重要なファクターでもあったようです。

「インド映画」と一括りにされがちですが
地域の特色を出した映画というのが
独立前後のインドでは
アイデンティティーを確立する上でも
とても重要でした。

その上で、身近な現実に即した
社会派の内容や
民謡調の旋律の起用が
ケーララ映画というジャンルを
確立する事になりました。

ちなみに、イェーシュダースは
ヒンディー映画の歌も歌っています

天性の甘やかな声を称賛されつつ、
ヒンディー語の発音で
揶揄される事もあったようです。

古典音楽家としてのイェーシュダース

イェーシュダースは、
こちらも伝説的な存在である
南インド古典声楽歌手
チェンバイ・バーガワタールの
弟子であり

映画音楽や宗教讃歌の歌い手として
熱狂的な人気を誇りながらも
古典音楽の歌い手としても
活動を続けていて、
高い評価を受けています。

彼のインタビューを読んでいると、
物凄く聡明な人であるという印象を受けます。

多くの人の求めるポップな歌と
古典音楽のより精神的な歌いの
バランスの取り方を測りながら、
公演活動を続けられているようです。

https://youtu.be/2AFE2f3aBtE

奥さまはヒンドゥー教の出身で、
息子さんも歌手として活躍されています。

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