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ケーララの歌舞伎?「カタカリ」

ケーララ州の芸能と言って有名なのは、
何と言ってもカタカリです。

極彩色の派手な装いの舞踊劇、という性質から
よく歌舞伎や京劇と比較されます。
伝統的には、全てが男性によって演じられる舞踊劇です。
アジア初のノーベル文学賞受賞者として有名な詩人タゴールによって、
インド四大芸能にも数えられ、
ケーララの観光の目玉の一つとなっています。

「カタ」は物語を意味する「カター」から、
「カリ」は芸能を意味する「カラー」から来ています。
マラヤーラム語のkaliには「遊び」という意味もあります。

ちなみに、顔が緑色のキャラクターはヒーローです。
悪役は赤や黒の顔をしている事が多いです(が、悪役に限りません)。
他の多くのインド芸能と同じように、
強調された表情の動きとパントマイム的な表現で、様々な情感を表します。

カタカリの歴史は、17世紀、クリシュナーッタム(もしくは、クリシュナナーッタム)の誕生に始まります。
北ケーララのザモリンの王様が陣頭に立ち作ったと言われています。

この噂を聞きつけた、南のコッタラッカラの王様
(トラバンコー王家の分家らしい)が劇団の派遣を要請した所、
政治的な対立のため、断られてしまいました。
それで、対抗して作られたのがラーマナーッタムです。

前者はクリシュナ神にまつわる舞踊劇であり、
古典語であるサンスクリット語で上演されましたが、
ラーマナーッタムはラーマ神にまつわる舞踊劇であり、
現地語のマラヤーラム語で上演されました。

クリシュナーッタムは、現在も名高いグルワユール寺院で上演されています。
一方ラーマナーッタムは、後にカタカリへと発展を遂げるのです。

カタカリは、上記のクリシュナーッタムの他、
クーリヤーッタッム、アシュタパディヤーッタム、
ムディエットゥ、テイヤム、パダヤニ……等、
様々なケーララ芸能の要素を併せ持ち、
カラリパヤットという武術の影響を強く受けている、と
ウィキペディアでは語られています。

(ここまでは主にウィキペディアを参照。)

カラーダランによれば、18世紀、
北ケーララ・コーッタヤムの王様がカタカリの改革に着手し、
現在に近い形になりました。

すなわち、叙事詩マハーバーラタの題材を取り入れ、
音楽は役者ではなく歌手が歌うようになり、
武術カラリパヤットの動きが基礎として組み込まれ、
ムドラ(手話のような)やアビナヤ(表情表現)はより様式化されました。
マラヤーラム語の使用に表れるように、元はフォルク、民衆に近い芸能だったものが、
パトロンである王族やナンブーディリ(バラモン)向けに
儀式的な要素を強めていったのです。
(参照:カラーダランの講演

余談になりますが、この講演でカラーダランは、
メディアにより突出した「スーパースター」の存在にスポットライトが当てられ、
作り出されることへの問題提起をしています。

こうしたメディアの動きによって、
新たな若い世代は台頭を許されず、
スーパースターが去った後は、結果的にその芸能自体が弱体化する、と。

また、上記18世紀の改革により、
それまで武士であり農民でもあったナーヤルたちが、
専業の役者化していき、個人主義が台頭してきた、とも語っています。

さて、このような歴史を経てきたカタカリの歌唱は、
寺院音楽であるソーパーナ・スタイルから発展しました。
これは、神々を題材にした、信仰に関わる芸能としては
ごく自然なことです。
当時は、ケーララの歌唱のプロ・スタンダードといったら、
寺院のソーパーナム(本殿に繋がる階段)で歌われるものであったに違いないのですから。
ソーパーナ・スタイルのターラ(拍子)で演奏され、
ラーガ(旋律系)もカルナーティック(南インド古典音楽)には無い、
独自のものがあるといいます。

ケーララの寺院音楽、ソーパーナ・スタイル

このハイデラーリのドキュメンタリーがとても美しく、
カタカリの歌の魅力にも富んでいるので、ここで紹介します。
彼はとても人気のあったムスリム(イスラーム)出身のカタカリ歌手です。

ムスリムであり、低カーストでもあるゆえに、
カラーマンダラム(カタカリ学校)では差別を受けた事、
この撮影の時点でも、寺院の中で直接クリシュナ神に歌を捧げる事がで果たせていない事などが語られています。
(このドキュメンタリーの完成を待たず、鬼籍に入られました)。

上のが第1部、この下が第2部です。

カタカリの音楽は、このように歌「パダム」と、
両面太皷マッダラム、鼓のような形をしたイダッキャ、
縦に筒のような太鼓チェンダ、
イラターラム(シンバル)、チェンギラ(どら)で構成されており、
演技自体は無言劇であるカタカリの、欠かす事のできない要素です。
(無言劇と書きましたが、叫ぶ事はあります)

カタカリ・パダム(音楽)は私の個人的に大のお気に入りなので
そのうち別項を立ててご紹介できれば、と思います。

現在、カタカリはコチ(コーチン)などに行けば、
2〜3時間などの単位で、お化粧のプロセスなども含め
見学する事ができます。

しかし本来は、何時間もかけてお化粧や衣装の着付けをし、
その間に徐々に役の魂を降ろし、入り込んでいく、
というような過程があります。
あるお寺での公演の前に楽屋を覗かせていただいたら、
猿神ハヌマーンの役の人は、まだまだ顔のお化粧が済んだか済んでいないか、
まだ開演まで数時間あるという状態なのに、既に
まるでハヌマーン、猿の所作になっていました。

そして、一晩中演じるのです。
お寺での夜通しの公演は、今も行われています。
ただしこれも時代の流れに合わせ、
かつては一晩で一つのエピソードを時間をかけてやっていたところを、
現在は見せ場を中心に、3エピソードほどを一晩にやる
という事が多いそうです。

ところで、これは余談で、私の個人的な推察なのですが
クーリヤッタムやカタカリのこの衣装、色合い的にも
衣装の素材や形的にも、
ポルトガルの影響も入っているんじゃないかな、と思っています。


私の大好きな本。

南インドの宝石、ケーララ州のこと

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