🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

仏伝ナロク②

アバニーンドラナート・タゴールによる
児童文学の名作、仏伝「ナロク」。
毎月1日と15日の更新で
少しずつ翻訳連載していきます。

ベンガル語の原作からの翻訳ですが、
所々英訳”Nalak”を参考にしています。

改行は、スマホやブラウザで
読みやすいような形に
工夫したものです。

終わりが見えないほど
大きな庭園には、
ひたすら木
また木が
植わっていて、

それから青々とした草原を
水気を含んだ風が渡り、
ひんやりとしています。

鳥の歌が響き渡り、
花の香りが
漂っています。

庭園の中央には、
大きな蓮池があります。
その蓮池の畔に
空に届くほどの高さの
沙羅双樹がありました。

そのひと枝ひと枝、
葉っぱごとに、
花が咲いています。

南風に吹かれて、
その花が
根本にある白い
座り石の上に
フワフワと落ちました。

|

夕方になりました。
地域じゅうの美しい娘たちが
蓮池で水浴びをしました。
頭の上にお団子を作り、
首には木の首飾り。
両耳には金の耳飾り。

庭師の男女の一群が
枯れ葉を掃き掃除し、
花には水をやり、
日が暮れたら
仕事を終えて
家に帰って行きました。

青々とした草原も、
池の畔も、
木の根本も、
どこを見渡しても、
少しの埃や枯れ葉も
落ちていません。

|

やがて夜が来ます——
春の満月の夜です!
西に日が沈み、
東から月が
顔を出そうとしています。

地上の片端には
黄金のともしびが、
反対側に目を向けると
一筋の銀の線。

頭上には藍色の空が、
数千数万の星々、
夕べの祈り、
ほら貝や銅鑼の音に
満たされていきます。

このような時間に、
マーヤー王妃が
銀かたびらに覆われた
黄金の駕籠に乗り、
侍女と共に
庭の散策にいらっしゃいました。

王妃を取り囲む侍女たちは
たくさんの花の扇と、
噛みタバコの箱を持っています。

王妃は
お気に入りの侍女の手を取ると、
闇夜の中を移動しながら、
庭園の中央の、
あの巨大な沙羅双樹の下に
いらっしゃいました。

左手は、花が満開に咲き誇る
沙羅双樹の木の枝に、
右手はおん自らの腰に添えられました。

|

この時、日が沈みました。
鳥たちは一斉に
声を上げて飛び立ち、
風には花の香りが充満し、
空には星々の光が
満ち満ちています。

東の空に満月が昇りました。
まるで沙羅双樹の上に
黄金の傘がかかったようです!

まさにその時、
聖ブッダが
お生まれになりました——

黄金のお人形のように、
かぐわしいチャンパの花に覆われた
地上にもう一つ、
月が誕生したように。

四方に光が広がりました。
もうどこにも
暗闇は見当たりません。

マーヤー王妃のお膝で
ブッダ様はお目をお開けになりました。

大地のみ胸にいだかれて、
ブッダはお目をお開けになりました。
蓮の花に落ちた
一粒の滴(しずく)のように、
純粋で曇りなく、美しく。

Abanindranath Tagore’s illustration copied and reproduced (with certain re-arrangements), then coloured with Japanese watercolour and white postercolor by Tomomi Paromita. (挿絵を模写の上、独自に着彩。)

みるみるうちに、
ルンビニーの庭園は
人々でいっぱいになりました。

大臣や従者たちを引き連れて、
シュッドーダナ王が
王子に会いにいらっしゃいました。

使用人たちは皆
ほら貝を吹いたり、
あるいは「ウルルルル…」と
ほら貝の声を上げました。

天界から花の雨が降り、
空では雲の上で
天人たちが
鼓を打ち鳴らしています。

地上の家々からは
ほら貝や銅鑼の音が
鳴り響いてきます。
地下からは戦太鼓の勝利の音が
響いてきました。

聖ブッダは
三界じゅうの
恐ろしいほどの歓喜の
中心にお生まれになり、
大地に降り立って
最初の七歩を歩かれました。

美しい両のおみ足は、
降り立つたび
地下の全てを貫くように、
一歩大地に触れるごとに
黄金の蓮の花が咲きました。
炎の糸車のように、
大地の上に咲きました。

そして天から
七つの雲が飛来して、
七つの海の水を汲み上げると、
その七つの蓮の花に
ざあざあと水を注ぎました!

|

ナロクはすっかり驚いて
見つめました。
神々も悪魔も人々も、
皆一緒になって
その七つの蓮の花の
真ん中に立つブッダに
祝福のお水を
振りかけているのです!

その時、
ナロクのお母さんがやって来て、
ナロクを呼びました。

「わが息子!
聖者はもうここに
いらっしゃらないのに、
どうして森に
居座っているの。

眠りもしない、
食べもしない、
読み書きの勉強もしないで——
ただ目を閉じて
瞑想をしてるって?

この年齢で
もう出家なさるなんて
お偉い事。
ほら、家に帰るわよ!」

訳責:パロミタ
訳文の著作権はパロミタにあります。
無断転載厳禁。
アバニーンドラナート・タゴールによる
児童文学の名作、仏伝「ナロク」。
毎月1日と15日の更新で
少しずつ翻訳連載していきます。

ベンガル語の原作からの翻訳ですが、
所々英訳”Nalak”を参考にしています。

改行は、スマホやブラウザで
読みやすいような形に
工夫したものです。

次回更新は2月1日(予定)。

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