🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

仏伝ナロク①

アバニーンドラナート・タゴールによる
児童文学の名作、仏伝「ナロク」。
毎月1日と15日の更新で
少しずつ翻訳連載していきます。

ベンガル語の原作からの翻訳ですが、
所々英訳”Nalak”を参考にしています。

改行は、スマホやブラウザで
読みやすいような形に
工夫したものです。

聖者デボルは
瞑想の内に
坐っていました。
少年ナロクは
この聖者の
お世話をしていました。

暗闇は森じゅうに広がり、
暗闇はバニヤン樹の下に、
そしてガンジス川の
こちら岸にも
あちら岸にも
広がっていました。

夜も更けて、
空には星々が
花のように咲き、
風は眠っているのか、
水面(みなも)には
少しの波紋も
広がっていませんし、
木の葉は少しも揺れていません。

ふいに、暗闇の中に
光が生まれました。
花が咲くように、
月が昇るようにーー
少しずつ、
少しずつ、
また少しずつ。

地上のあらゆるものが、
まるで舞を舞うように
目を覚ましましたーー
蓮池の水面が揺れるように。
あちらでも
こちらでも、
そちらでも、
どこでも!

聖者は目を開きました。
そして空に
奇跡のような光を見たのです!

月の光でも無く、
太陽の光でも無く、
全ての光を
混ぜ合わせたような、
光の中の光!

このような光は、
今まで誰も
見た事がありませんでした。

空の端から端まで、
誰かが七色の旗を
掛けました。
どなたか神さまが
大地に降りていらっしゃるのか、

そのように誰かが、
どこからともなく、
光の梯子をかけたのです!

聖者は瞑想の座から
立ち上がり、
ナロクに言いました。

「カピラヴァーストゥに
ブッダ様がお生まれになる。
私はかのお方に一目
お目にかかりに行く。
お前は元気にしていなさい」

|

森の中の
曲がりくねった小道を、
聖者は北の方に
歩いて行かれました。

ナロクが一言も発さずに、
バニヤン樹の下で瞑想に入ると、
紙芝居のように、
見えて来るものがありました。

|

カピラヴァーストゥの宮殿です。
王妃のマーヤー様は
黄金の寝床で
横になっておられます。

部屋のすぐ外は
開けた縁側になっていて、
その向こうにはお庭、
そして街が、お寺や神殿が
見えました。

更にもっとずっと先には、
ヒマーラヤの山脈が、
白い雪に覆われています。

更にその向こうには、
空を覆い満たすように、
奇跡のような
白い光が光っています。

その中央に、
赤い丹の指先のように、
太陽が昇ってきました。

王のシュッドーダナは
この奇跡のような光の方を
ご覧になっています。

その時王妃マーヤーが
お目覚めになり、
おっしゃいました。
「王様、何とも不思議な夢を見ました!

ある白い象が、
まるで第二の月のように
美しく、たおやかな曲線の
二本の牙を持っているのです。

その象が
ヒマーラヤの山々の向こうから
雲に乗ってやって来て、
私の膝の上に降り立ったのです。

それからどこに行ったのか、
もう見えなくなってしまいました!

そして私の額には、
赤い丹の指先のように
赤い染めが付いていました」

Abanindranath Tagore’s illustration copied and reproduced (with certain re-arrangements), then coloured with Japanese watercolour and white postercolor by Tomomi Paromita. (挿絵を模写の上、独自に着彩。)

|

王妃が夢の話を
なさっている内に、
夜は完全に明けて
朝になっていました。

宮殿の楽団が笛を吹き、
人々が往来を
行き来しています。
お寺からは
ほら貝の音が鳴り響き、
女性の間の侍女たちは
黄金の水差しに
マーヤー王妃の水浴びのための
水を汲んでいます。

花輪作りの女たちは、
黄金のお皿に
祈祷用のお花を
ちぎって飾り付けています。
王妃の手飼いの孔雀は
王妃の居間に入ると
すぐ近くに座りました。

黄金の籠の中のオウムは、
餌を求めて
侍女たちに文句を言い始め、
物乞いの女がやって来て
「王妃さまに栄えあれ!」
と言って
扉の前で待っています。

このように朝が過ぎ、
宮殿では
王妃の夢の話を
皆が噂しました。

額には赤白檀の印、
頭にはルビーの王冠。
赤い絹を身に纏って、
朝の太陽のように
シュッドーダナ王は、
玉座に光のように
お座りになりました。

傍には大臣、
そしてその隣には笏持ちが、
黄金の笏を手に立っています。
王を挟んで反対側には、
傘持ちが白い傘を広げて掲げ、
その隣には
盾と剣を持った警察長官。

王の前には二方向、
二列に人が並んでいます。
片方には
バラモンの僧侶たちや学者たち、
そしてもう片方には
諸外国の王や王子たち。

その周りを囲むように
国民が、
また王たちの数だけ
門番が、
太い竹の杖を構え、
赤いターバンを頭に巻いて
立っています。

諸王たちの中心、
赤い天井の真下に、
八つの赤い座布団が
置いてあり、
王の八人の占星術師が
座っています。

筆を手に書物を開き、
王妃の夢の意味を占うために
座っているのです。
占星術師たちの
ある者は白髪で、
ある者は髪が無く、
またある者は髪を
上でまとめて結い、
またある者は
箒のような髭を生やしています!
その誰もの手に
カタツムリの殻。

八人の占星術師たちは
それぞれに何か書きつけながら、
王妃の夢の
意味するところを語ります。

「明け方の夢は、偉大なる王、
王子は輝ける王。
月のような美しさを持ち、
あらゆる能力に長け、
王の中の王、
長寿なる者。

白い象の夢は、
穏やかで深い、
地上に稀な、
生ける者の苦しみを取り除く、
非常に信仰深く、
偉大なる智者の王子を
得られるでしょう。

これは王様、間違いなく、
偉大なお方が
このシャーキャ族に
化身していらっしゃいます。

聖典は嘘を申されません。
よろこびましょう」

四方から声が上がりました。
「よろこぼう、よろこぼう!
食事を振る舞い、
衣服を振る舞おう!
灯明を、お香を、
土地を振る舞おう!」

カピラヴァーストゥの都の
宮殿だけでなく、
あらゆる人々の家で、
そして市場で、田んぼで、川辺で、
よろこびの音楽が
立ち上がりました。

空もよろこびに微笑んでいます。
風もよろこびに吹いています。

王の王冠からは
いくつものルビーが垂れ下がり、
ショールの房には真珠が光り、
大臣の首には
王から賜った首飾り、
学者たちの体には
王妃から賜った布が巻かれ、

使用人や病気の者、
子どもや年寄りの額には、
宮殿の赤い絹の布が
揺れています。

訳責:パロミタ
訳文の著作権はパロミタにあります。
無断転載厳禁。
アバニーンドラナート・タゴールによる
児童文学の名作、仏伝「ナロク」。
毎月1日と15日の更新で
少しずつ翻訳連載していきます。

ベンガル語の原作からの翻訳ですが、
所々英訳”Nalak”を参考にしています。

改行は、スマホやブラウザで
読みやすいような形に
工夫したものです。

次回更新は1月15日

連載一覧はこちら

お知らせやブログ記事の元になるような雑感など、SNSなしに読めるといいなという方は無料メールマガジンの登録をご検討ください。

最初に、パロミタの自伝シリーズが11回に渡り配信されます。
もちろんお時間無いときはスルーしてくださいね、という前提なのでお気軽にどうぞ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA