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仏伝「ナロク」⑩

アバニーンドラナート・タゴールによる
児童文学の名作、仏伝「ナロク」。
毎月1日の更新で
少しずつ翻訳連載していきます。

ベンガル語の原作からの翻訳ですが、
所々英訳”Nalak”を参考にしています。

改行は、スマホやブラウザで
読みやすいような形に
工夫したものです。

※スピードを優先して、
翻訳としては推敲の足りない、
下書きのような状態で
出しています。
ご容赦ください。

全編の翻訳を終えたら、
改めて推敲をして、
どこかにまとめて
出すつもりでおります。

プンナーを家の玄関まで
送り届けて降ろすと、
ショワスティは行ってしまいました。

その時スジャーターは、
仔牛を牛小屋に繋いで、
息子を寝かせ、
翌朝のお祈り≪プージャー≫のための
お皿を集めて
用意しているところでした。

プンナーがやって来て言いました——
「お母さん、今日は本当に
神様をお見かけしました。
明日、もしも日の出前の
とても早い時間に行ったら、
お母さんもお見かけできるはず。

私とショワスティのふたりとも
お見かけしたの。
でも神様にお願い事をするのは、
すっかり忘れてしまいました」  

スジャーターは言いました——
「もし忘れていなかったら、
何をお願いしたかった、プンナー?
ショワスティと結婚できますように——
違う?」
しかしこの時には
プンナーはもう他に
行ってしまっていました。

スジャーターがお祈り≪プージャー≫の
準備をすっかり終えて
部屋に戻った時には、
プンナーは弟の隣で
眠りについていました。  

スジャーターは今日は
ちっとも眠くなりませんでした。

まだ夜の内に、
プンナーを起こしました。
プンナーは牛小屋の扉を開けて、
その一角に灯明をひとつ灯すと、
乳搾りのために座りました。

夜明け前の冷たい風に
牛たちは寒くなって、
少し怖くなったのか、
落ち着かなげに
あっちを見たり
こっちを見たりしました——
こんな夜更けに、乳搾りに来たのは誰?

けれどもプンナーが彼らの背中を、
左手で優しく、
名前を呼びながら撫でつけると、
牛たちは落ち着いて
大人しくなりました。

スジャーターは牧場の片隅で
薪に火を点けてから、
井戸水で身体を洗いに行きました。

プンナーは牛乳を絞ると、
洗った鍋を薪の上に置きました——
牛乳はフツフツと沸騰しました。

スジャーターは
洗い立ての服を纏って
プンナーの許に来て言いました——
「どこもちぎれていないお花を
いくらか摘んでおいで。
牛乳は私が温めておくから」  

村長の家のすぐ脇に庭があります。
そこにはマリーゴールドの花が
たくさん咲いています。

プンナーはその花で花輪を作り、
バニヤンの葉に少しだけ
油を混ぜたシンドゥールで
お祈り≪プージャー≫のお皿を飾ると、
そこに花輪を置いて、
スジャーターを呼びました——

「お母さん、もう行きましょう、
これ以上遅くなったら
朝になってしまいます。
そしたら神様が見られません」

スジャーターは
沸騰させて清潔な牛乳を
真新しい陶器の器に注ぐと
プンナーに手渡して言いました—

「お前はこれを持って行きなさい。
私は祈祷≪プージャー≫のお皿を持って、
それからマヌワーを連れて行きます」
マヌワーはスジャーターの息子のことです。

夜明け前の暗闇の中、
村の道が少しずつ
見えるようになっていきます。

先を行くプンナーは、
牛乳で満たした小さな壺を手に、
アンクレットを鳴らしながら
歩いて行きます。

後を行くスジャーターは、
息子を抱え、
祈祷≪プージャー≫のお皿を右手に、
歩いて行きます。

プンナーとふたりだけで行くことに、
スジャーターは少しずつ
怖くなってきました。

ショワスティたちの家の近くに来ると、
スジャーターは言いました——
「ねえ、ショワスティも
呼んで行きましょうよ!」

それ以上ショワスティを
呼ぶ必要はありませんでした。
プンナーの足音を聞いた
ショワスティは、
木の棒と灯りを持って
出てきていたのです。

3人は牧草地を横切っていきます。
そのとき、空には星が見えていました——
夜明けはずいぶん遅れていましたが、
その中でも朝の風が吹き、
村の辺りから、
夜通し溜まっていた牛糞の臭気が、
白い覆いのように、
段々と上空へとのぼっていきました。

ウルー草の藪には数羽のシマシャコ鳥、
ミサキノハナの木には
数羽のムクドリがいて、
ほんの少し鳴き声を上げ始めています。

ヒメコノハドリが1羽、
さえずりながら
牧草地の向こうへと
飛んで行きました。
チメドリたちはガサガサ、
チュプチュプと音を立てながら、
ジャックフルーツの木の下に
降りてきます。

灯りを消したショワスティは、
スジャーターとプンナーを連れて
川岸までやって来ました。
遠くの木々や草花が少しずつ
はっきりと見えるように
なっていました。

川岸に立ったスジャーターは
見ました——
バニヤン樹の下に
座っている方がいる——
その方の身にまとった衣の
ゲルワ色の輝きが森の半分を照らし、
残りの半分を空の光が
朝焼けの色に染めていました。

Abanindranath Tagore’s illustration copied and reproduced (with certain re-arrangements), then coloured with Japanese watercolour by Tomomi Paromita. (挿絵を模写の上、独自に着彩。)

スジャーターとプンナーは、
そうしようと思っていた通りに、
お祈りと礼拝を行ない、
シッダールタから祝福をいただいて、
帰って行きました。

ショワスティは何も
差し上げるものがありませんでした。
それで、一日かけて
川辺にひとりで座り、
たくさんの手間をかけて
クシの草で敷物を編んで、
川の水で冷やし、
シッダールタに差し上げるために
持って行きました。

そのとき、シッダールタはまだ
バニヤン樹に来ていませんでした。
ショワスティは出来立ての敷物を
祭壇の上に敷き広げ、
心の中でシッダールタに礼拝を捧げると、
川の向こうへと戻って行きました。  

日が暮れてきました。
シッダールタは
アンジャナー川で沐浴をすると、
ショワスティの捧げた
クシの敷物の所に来て、座りました。

水にさらしたクシの草の
甘やかな匂いは、
シッダールタの心に
安らぎをもたらしました。

満月の光に照らされ、
大地の隅々まで見えるようでした——
とてもくっきりと、きれいに。      

アバニーンドラナート・タゴールによる
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