私がケーララ伝統のソーパーナ音楽を習おうとしていた時、
教わった歌の一つに、カラム(コーラム/吉祥文様)の歌があります。
歌詞はこんな感じです。
黄金色のおみ足の縁取りを この手で拝みます
おみ足の、新芽のような指先を 拝みます
象の鼻(「蜻蛉の手」)のようなたおやかな大腿を 拝みます
絹の衣の縁取りの、金の重なりを 私も 拝みます(鼓)
アラ無花果の葉のようなくびれ
カーマの花矢が刺さったような、愛らしいへそ
この手で拝みます
メール山にも勝るみ胸も
鈴生りに鳴る首飾りもターリも
この手で拝みます(主節と鼓)
御手で輝かしく、振りかざす
剣も、盾に三叉鉾、鬼の首も
この手で拝みます
まるい御顔のお額も、炭紅の瞳も
かぶと虫の色合いに劣らぬ巻き毛も
この手で拝みます(主節と鼓)
御耳の輪におさまる耳飾りも
鋭く尖るような犬歯も、歯も舌も
この手で拝みます
雨雲や闇夜のような御髪(おぐし)も
つま先から頂まで、そのおからだを縁取る全てを
この手で拝みます(主節)
[訳責:パロミタ]
このカラムകളംは、語としてはおそらく
タミルやオリッサの吉祥文様「コーラム」と同じだと思います。
かの地では、朝ごとに家のお母さんが
玄関の前に描くそうですが、
ケーララではあまり見かけません。
時折、バラモンのお家や、タミル系のお家で見かける程度です。
トリバンドラム、パドマナーバ寺院のある地域の裏にある
ウェストフォートは、元々バラモンが住んでいた地域で、
細長い家が長屋のように連なっているのですが、
ここでは、とてもシンプルなコーラムを見る事ができます。
ケーララでは主に、寺院で祭礼の際に
五色の粉末で描かれる、神の絵姿曼荼羅を意味します。
五色とは、白、黒、緑、黄、赤で、
この粉は穀物やスパイスなどから作られています。
寺院儀式なので、今もそのような
伝統的な植物性の粉を使っています(はずです)。
最後に、絵は消され、粉は信者たちに配られます。
また別のカラムパートゥ കളംപാട്ട്、「カラムの歌」。
カラムを描く過程・儀式をカラムエルドゥകളമെഴുതു と言います。
代々これを描くカーストは決まっているそうです
(いわゆるアンバラヴァースィ[寺院カースト]に属すると思うのですが、
今も厳しくカーストの職能として守られているのかは分かりません。
多分、基本的には守られていると思いますが)。
上に載せた歌は、人々がカラムの周りを歩いて回る間に歌う歌だと教わりました。
これはあくまで一つの例でしかありませんが、
何が歌われているかの一端は覗けます。
そして、見た目だけでは、妙にユーモアのある強烈な姿、
というぐらいの印象の女神が、この歌一つを知るだけでも、
妙な美しさを以って立体的に浮かび上がって来ます。
それから、オーナム祭の際には、
花のカラム、「プーカラ」が10日に渡って作られます。
これは、オーナム祭の主祭神である
マハーバリ(マーヴェリ)のおみ足をお迎えするためです。
オーナム祭と前後して、象の顔の神様ガネーシャのお祭りガネーシャ・チャトゥルティーがあるのですが、
ケーララだとこのために町のあちこちにガネーシャ象が建てられ、
その前にも、この花のプーカラが描かれます。
プーカラには特別に歌がある訳ではありませんが、
「コーラム」スペクトラムの一部としてご紹介しました。
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