🌕6月30日高田馬場ときわ座、7月13日国立ギャラリービブリオ🌕


🟡 8月26日9月23日10月21日 (月)
世界が広がるインド音楽講座2024

🟡9月16日 音楽のあわい@祖師ヶ谷大蔵ムリウイ
Op16:30 st17:00 ¥3000+飲み物
With寺田亮平、寺原太郎。

インド声楽の特徴

インド音楽と言った時に、真っ先に思い浮かぶものと言ったら
何でしょうか。
シャラララララン…という、まさに天上の音楽というような
シタールの音色でしょうか。

それとも、どこか水の音を思い起こさせるような
タブラの音色豊かな響きでしょうか。

あるいは、高く鳴り響く女声の歌声?
低く甘やかに伸びる男声の歌声?

インド音楽の基本となるのは、歌です。
特に古典音楽では、全ての器楽の基礎となるのが歌だとされ
弦楽器や打楽器奏者でも、非常に歌が上手い人も多いです。


〔若い時から人気があったコウシキ・チョクロボルティ。北インド古典音楽のカヤール〕

コブシ

いわゆる「コブシ」にあたる声の「揺らし」は、
北ではガマク、南ではガマカム、と言います。
大雑把に言うと、「行ったり来たり」のような意味の言葉です。

多くの民族音楽に共通する事ですが、
いわゆるベルカント唱法的な「A(h)a(h)a(h)a(h)a(h)a…」と
ハ音が入る事はありません。

インドで古典声楽を学ぶ時、まずは「サレガマ」を
歌うところから始める事が一般的です。
サレガマ(南ではサリガマ)パダニサ、というのは
インドの音階でドレミにあたるような言葉です(細かく言うと、違いますが)。

この「サレガマ」を
徐々に「ア〜…」と阿音で歌うところから
歌い声の訓練が始まりますが、
歌の中で「サレガマ」が歌われる場面も多いです。


〔TMクリシュナ。南インド古典、カルナーティック音楽の雄。反逆者でもあり、バラモンの家に生れながらバラモン的なヒエラルキーを嫌悪し、カルナーティック音楽界のさまざまな慣習に挑戦、反旗を翻している〕

発声

歌声は、基本的にいわゆる地声ですが、
私の見てきたところ、「地声の歌声」って
人種や身体によっても違うよな…と感じるので、
「地声に類するインド声楽の歌声」と言った方が良いかもしれません。

その上で、それぞれのジャンルによって、
また微妙に発声が違って来るようです。

共通するのは、「甘やかな声」が理想とされ
求められる、という事です。
向こうの「マドゥル」「マドゥラム」(甘い)の直訳で、
よく英語でもsweetとインドでは形容します。

これをより日本語に馴染む表現にすると、
「豊かな声音」というような感じになるかもしれません。
内に深い何かを湛えたような声音の事です。


〔ウダイ・バワルカル。北インド古典ドゥルパドは、インドで最も古い音楽様式を伝えていると言われています。前出の二人もそうですが、世界的に非常に高く評価されている歌い手です〕

インドのポップ歌手(=映画音楽の歌手)には、古典音楽の素養を持つ人も多いです。
耳が慣れてくると、そうでない人は大体分かります。
古典音楽の歌手が映画の挿入歌を歌う事もあります。
インドの映画音楽などでも物凄く上手い歌声がとても印象的ですが、
その秘密の一つは古典音楽であるかもしれません。
(作曲家も、インドと西洋両方の音楽について学んでいる人が大半です)

声の訓練

とはいえ、だからと言ってインド古典音楽に
特別なボイストレーニング法があるのかと言うと、
何とも言いがたいところです。

というのは、それぞれの伝統に声の訓練法は伝わっているのですが
発声法というよりは、精緻な音を正確に当てていけるようになる訓練、という色合いが強いです。
今まで何人か、外国人でインド声楽を学んでいる人に聞いてみましたが、
皆さん大体は、「やっていれば自然と良い、甘い声になる」というスタンスで教わっているようで、
声そのものの訓練については各先生のセンスによるようです。
私も、初めは「大丈夫、その内『来る』から」というような風に教わりました。
(ちなみに、この学びへの態度はヨーガなどにも共通するところがあるように思います)

とはいえ、少し声の仕組みを勉強したりすると、
「なるほど、あの練習法はこの側面に取り組むものだったのか…」
と納得するところも非常に多いので、
幼い頃から訓練し、良い歌声を聴いて育つ子供たちには、
自然と発声訓練の役割も果たすのではないかと思います。

外国人だと、そもそもの想定されている
「正しい」取り組み方に辿り着くまでが一苦労ですが。


〔ウスタード・ヌスラット・アリー・ファテー・カーン。カウワーリーというスーフィー(イスラーム神秘主義)の歌謡で、パキスタンの歌い手。上の3人から急に時代が遡るのは、単に私の趣味です…〕

古典音楽でもそれぞれの伝統によって
発声が違ってくるように、
他の歌の伝統もそれぞれに声の特色があります。

様々なインドの歌声

ここで全ての伝統を列挙する事は叶いませんが、
インド音楽はあの長い、瞑想的な古典音楽だけではない
という事はご理解いただければと思います。

いえ、全てのインド音楽は瞑想に通じるという側面もあるし、
そうあるべきだとも言えます。
しかし、民間には、同時により「活発」な…という言い方も語弊があるかもしれませんが、より「フォークミュージック」と呼ばれるものに近い音楽も多いです。

しかしそんな古典ではない音楽でも、
古典の素養があるのかなという歌手が出てきたり、あるいは
昔は使われていなかった「サレガマ…」を歌いの中に取り入れたり
少しずつ変化が起きています。


〔パルバティ・バウル。ベンガルの舞い歌う行者の伝統、バウル〕

また、昔のマイクが無かった時代の歌い方と
現在のマイクが当たり前の、
しかもインドだとリバーブをかけまくった爆音が好まれる傾向にあるので、
現代の歌い方は自然、異なっているでしょう。

更に、インド国内のいわゆるモンゴロイド系の人々の伝統に属する歌も、
インド古典音楽の普及や、日々目にし、耳にするヒンディー映画などの影響で
変化しているという側面もあるようです。
インド古典音楽自体、西洋音楽の影響から全く自由という訳ではありません。

そんな中でも、メソッドのしっかりしている古典音楽は
インド音楽全体にとっての目印のような存在であるのかもしれません。

インドの中でも色々な歌声を、ここでもご紹介できたらなと思います。

お知らせやブログ記事の元になるような雑感など、SNSなしに読めるといいなという方は無料メールマガジンの登録をご検討ください。

最初に、パロミタの自伝シリーズが11回に渡り配信されます。
もちろんお時間無いときはスルーしてくださいね、という前提なのでお気軽にどうぞ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA