🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

インド人のアイデンティティ

日本人である私が、インド人のアイデンティティについて書くというのも
おこがましい話だと思います。
とはいえ、あくまで日本の方向けに、インド人という感覚を窺い知る一助として、書いてみています。

ケーララ州に住むインド人のアイデンティティは、
まず「マラヤーリ=マラヤーラム語を話す人々=ケーララ人」であり、
「インド人」はその次に来る、と言ってよいでしょう。

確かに、ヒンドゥー教徒もいれば、イスラーム教徒もいるし、キリスト教徒もいます。
けれども、まず彼らは「マラヤーリ」なのです。

彼らがよく好む、有名なジョークがあります。
「やっと月面に辿り着いた! その人が見たものは?
マラヤーリのおやじが営むチャイ屋だった」
というもの。
要するに、それだけ世界中どこにでもケーララ人がいる、というジョークです。

ちなみに、銀座の老舗カレー屋さん「ナイル」のナイルは、
ケーララの戦士階級「ナーヤル」から来ています。
つまり、彼らもマラヤーリなのです。
(従業員達は今もケーララに里帰りする、と聞いた事があります)

西ベンガル州には、主にベンガル人が住んでいます。
お隣の国バングラデシュ(旧東パキスタン)にも、ベンガル人が住んでいます。

そもそも「バングラデシュ」とは、「ベンガル人の国」の意味。
ウルドゥー語を公用語とするパキスタンから独立した時に、
この名が定められました。

バングラデシュの首都ダカと、西ベンガル州の州都コルカタの間には
直通バスや、飛行機の直行便が頻繁にあって、
ビザの問題を解決した人々はよく行き来しているそうです。

私はインドにいる時、この頃はだいたい西ベンガル州にいて、
割と周囲にバングラデシュの人が多いです。
私が見る限り、彼らは本当に同じ文化圏の人間として
同じ民族として付き合っています。
時々、互いの違いをおちょくったり、批判したりしながら。

また、私がかつて日本語を教えていた男の子は
生まれた時からケーララに住んでいましたが、
家族はタミル出身。

しかし、よくよく聞いてみると、タミルのテルグ人、なのです。
何世紀だか前に、アーンドラ・プラデーシュからタミル・ナードゥに
移住してきた、テルグ人。

彼らは、タミル・ナードゥに移住してからもテルグ語を話しています。
なので、ケーララに住んでいるこの家族も、テルグ語を話します。
けれども、現在アーンドラ・プラデーシュで話されているテルグ語とは、少し違って、意思疎通は難しいかもしれない、とも言っていました。
そしてもちろん、タミル語も話します。

それで、一家の間で何語で話しているかと言えば、
時に、テルグ語、時にタミル語、時にマラヤーラム語、そして英語。
何だか呆気に取られてしまいました。

そのどれかの言葉を、歴史のどこかの時点で落っことして
失ってしまっていてもおかしくないのに、全部使っているのです。

恐らくインドのほとんどの地域が、このような感じではないかと思います。
まず、自分の民族・コミュニティ。それから、国。
という、アイデンティティの順番。

それが変わるのは、海外に行った時。
そして、都市に生活する時です。

まだまだお見合い結婚の多いインドですが、
もちろん恋愛結婚も増えているし、
違う民族どうしの結婚もあります。

そうすると、家でも両親の共通語の英語でしゃべっている、
つまり母語は英語、という人もかなりの数、います。
特にデリーやバンガロールなどの多民族都市の出身であったり、
住んでいる人は、また感覚が随分違うな、と思う事があります。

特に、主に英語で生活しているような若者達は、感覚としては
私などとかなり共通しているものがあります。
伝統に惹かれながらも、現代という時代の中で、どう向き合って良いか思いあぐねていたり。

一方、バンガロール在住の日印(オリヤ=オリッサ人)ハーフのBig dealが、
オリヤ人のアイデンティティをラップにして人気を博す、なんて事もありました。(参考:アッチャーインディア

インドの凄いところは、様々な民族やアイデンティティの人々を抱えながら、
それでも「インド」という一つのまとまりが、幻想でなく形成されているところです。
目まぐるしく変わりゆく現代、
一方では古い文化が薄れたり、失われながら、また新たな潮流も様々に生まれているように感じています。

現代の「インド人」が作り出すこれからのインドは、どのようになっていくのでしょうか。

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