🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

インド料理:スパイスと牛乳の歴史

「インドでは毎日カレー食べてるの?」
とは、インドに行った人が
定番で訊かれる質問の一つです。

「カレー」と呼ばれる料理は
元々インドにはありませんでした。
最近は、言葉が逆輸入される形で
使われる事もありますが
やっぱり外国人向けの言葉です。

元になった言葉は、
南インドで使われる「カリ」
だと言われています。

元々は、野菜や肉、コショウなどの
料理に使われる具
を示す言葉でしたが、
今は「おかず」ぐらいの意味でも
使われています。

インド料理にとってのスパイスは、
日本人にとっての醤油や味噌のようなもの。
日本に来た人で
「全部しょうゆ味だった」
と言う方もたまにいるそうですが
インドのスパイスも似たようなものです。

全部カレーだと言えばカレーだし
全部カレーじゃないと言えば
カレーではありません。

スパイスを使った料理は
インド全土を含めた
南アジア、ひいては
東南アジアまで含めた
地域全体の特徴
のようなものですが、

実は、昔からスパイスが
どこでも盛んに使われていた
という訳ではありません。

北の牛乳文化

仏典の有名なお話で、
苦行をやめたお釈迦様が
スジャータという娘から
乳粥[パーヤサ]をいただいて召し上がった
というものがあります。

お釈迦様が活動されたのは、
主に北インド〜ネパールの地域です。
つまり、この頃
乳製品がこの地域で食されていました

その後、1000年ほどして
インドを旅した玄奘三蔵
(最遊記のお坊さんとして有名)
も、乳製品の存在にまず言及しており
チャパティ(パン)のような麦の加工食品や
豆を煮詰めたスープ(今で言うダールのような)はあっても
スパイスらしきものへの
言及はありません

当時の北インドの食生活は、
どちらかといえば
遊牧民の食生活に
似通ったものだったようです。

南インドのスパイス文化

一方南インドは、天然のスパイスの産地です。
9世紀の寺院に残されている碑文には
お供えされる料理に使われる
スパイスとして、

・ミラフ(コショウ)
・マンジャル(ウコン)
・ジーラハ(ヒメウイキョウ)
・シル・カドゥフ(カラシ)
・コーッタンバリ(コリアンダール)

(辛島昇 2009: p33)

が記されています。
これらは、今も
インド料理で使われる
代表的かつ基本的なスパイスです。

つまり、お供え物に使われ
碑文に記されているぐらいなので
この時にはスパイスを使った料理(いわゆるカレー)
の原型ができていた
という事になります。

特に南インド西海岸
ケーララのマラバール地域は
紀元前3000年の昔から
スパイスの産地として知られ
バビロン、アッシリア、エジプト等と
交易があったと
シュメールの碑文などに
記されているそうです。

のちには(といってもまだ紀元前の数世紀)、
ギリシアやローマにとっても
コショウの産地として
重要な存在となりました。

元々自生していたスパイスに、
更に東南アジアからもたらされた
スパイスも加わり、
南インドの、特にケーララは
世界有数のスパイス産地でした。

南北の食文化の融合

この、北の乳製品文化と
南のスパイス文化が
年月を経るうちに行き来し
融合して
現在のインド料理の文化に
なっていったと考えられています。

他にも、お米が主食の地域、
小麦が主食の地域。
肉や魚を食べるかなども
元々地域性がありましたが
これらが様々に交流し
混ざり合い、独自に発展し
各地域やコミュニティの料理へと
発展していきました。

たとえば、日本だと
「インドカレーと言えばバスマティ・ライス」
という方もいらっしゃいますが
南インドと東インドに
主に暮らす私は、
インドでバスマティ米を食べた事は
記憶にある限りでは、ありません。

どちらもお米文化圏ですが、
南インドには南インドの、
東インドには東インドの、
更にそれぞれの細かい地域によって
地元の様々なお米があります

このような多様性の上に
緩やかな「インド料理」というカテゴリーがあります。
最近は日本でも南インド料理店や
ベンガル料理店などが増えてきましたので
よかったら試してみて下さい。

ケーララ料理だったら
新宿のコチンニヴァースや練馬のケララバワン、
ベンガル料理だったら
町屋のプージャーなどが
私は大好きです。

参考:
インド・カレー紀行」辛島昇(2009)岩波ジュニア新書
ウィキぺディア (Retrieved 15th October 2019)

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