🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

南インドの祟る女神〜テイヤムとポンガーラ

インドでは女神の信仰が盛んです。
今回は特に南インドの
原始的な地母神の性質を受け継ぐ女神について
お話しします。

西海岸ケーララではバガワティと呼ばれ
西ガーツ山脈を隔てたタミルではマリアンマンと呼ばれる女神は
分けて捉えた方が良いのかもしれませんが
「南インドの原始的な女神」として
私はほとんど同列で捉えています。
が、ここでは私の知っている
ケーララのバガワティの話がメインになります。

とにかく古い、いわゆる「インド神話」
ヒンドゥー教の世界よりも
ずっと起源の古い女神だと考えられています。

しかしパールワティー女神、ドゥルガー女神、カーリー女神など
ヒンドゥーの女神と同一視され、習合される形で
今はヒンドゥーの一部として
祀られています。

元々ドゥルガー女神とカーリー女神自体、
より土着の女神が
パールワティー女神に習合されたのだと
言われてもいます。

しかし一見穏やかに見える
パールワティーでさえ、
愛を得るために辛い苦行を
自ら進んで行うという
激しさを持っているのです。

シヴァ神:最初のヨーギー、女神の夫

女神信仰は、
より原始的なイメージのある蛇の信仰、
ナーガよりも古くから
奉られていたと言われています。

女神は恵をもたらす存在であり、
天然痘などの災厄をもたらす
恐ろしい存在でもあります。
天然痘の女神の存在は、
北インドのシータラー女神などにも見られます。

憑依芸能テイヤムのバガワティ

北ケーララの有名な
儀式芸能に、テイヤムがあります。

テイヤムは神を意味する
サンスクリット語「デーヴァ」の
訛った言葉だと言われています。

この日、
普段は最下層とされるコミュニティの
伝統の継承者が
バラモン(僧侶階級)にも敬われる
神、テイヤムになります。

テイヤムは憑依儀礼であり
憑依した神から村人への
助言などもありますが
芸能的に演じられる演目もあります。

被り物は巨大で重い物も多く
その状態で跳ね、回転もします。
憑依状態でなければできない
普通の状態ではとてもできない事だと言います。

様々な神々が
テイヤムにはありますが、
中でも女神のテイヤムは多いです。
その中の一つ、
ムッチローットゥ・バガワティ。

その村には
優れた智慧と智識で知られた
議論を戦わせれば
誰にも負ける事が無かった
聡明な乙女がいました。

乙女に嫉妬した男性学者達が
彼女を何とかして貶めようと企み
公の議論の場で
「最も辛い痛みは?」と尋ねると
乙女は
「出産の痛み」
と答えました。
人々はどよめきました。

更に、「最も大きな歓びは?」と尋ねると
乙女は「愛する人と交わる歓び」と答えました。
学者たちは、
本当に乙女ならば
そんな事が答えられるはずが無い。
これは村の恥である
と糾弾しました。

人々から
突然に向けられた
悪意と蔑み、弾劾の目に
ただ純粋に知識を答えただけの
乙女は戸惑い
震えました。

乙女は神々に縋り
自ら薪を積み上げて
己に火を付けました。

その後に起こる
いくつかの奇跡により
乙女が実は女神であったと分かり
乙女は今
ムッチローットゥ・バガワティ女神として
信仰されています。

女性の祭典、ポンガーラ祭

2月頃にケーララで行われる女性の祭典
「ポンガーラ」があります。
現在はケーララのあちこちのお寺で祭礼が行われていますが
元々はトリバンドラム近郊の
アーットゥガル・バガワティ寺院の祭礼です。

「女たちのシャバリマラ」とも呼ばれ
世界で最も女性の集まる年行事として
ギネスにも載っているそうです。
(シャバリマラについては、
アイヤッパンの項を参照)

シヴァとヴィシュヌの子・アイヤッパ神

お隣タミル・ナードゥ州には
有名な「ポンガル」というお祭がありますが
こちらは女神とは関係ありません。
しかしどちらも
壺で煮炊きする行為(ポンガルの語源)
に関わりがあるので、
起源は同じくするものかもしれません。

10日間あるお祭りの9日目には、
街中の道路脇で、女たちがお粥を炊きます。
この日は多くの職場はお休みで、
交通規制も敷かれ、
事故やトラブルのための対策本部なども置かれます。

アーットゥガル寺院の祭神は、バガワティ女神の中でも
特に「カンナギ」を化身とします。

カンナギは、
タミルの古い詩に歌われる女性
心ない夫に誠心誠意を以って尽くしますが
ある日その夫が冤罪により
マドゥライの王に処刑されてしまいます。
それに怒り狂ったカンナギは
街に呪いをかけ、
貞節さによる呪力で
マドゥライを滅ぼしました。

10日間の祭りの間、
人々はひっきりなしに
お寺にお参りに訪れます。

また、この時期の多くのお祭りと同じように、
敷地内では多くのプログラムが催され、
屋台も出され、大変賑わいます。

大きなステージでは
派手なプログラムやダンスや
歌の発表会が多いですが、
小さなステージでは堅実な
伝統芸能やバジャン(宗教歌)が多いです。

寺院自体、タミル様式の、
極彩色の豪華なもので、壮観です。
信者による奉納も数多いとか。

この時期のイーストフォートの名物は、
そこここにうず高く積まれ、
売られている土の釜と、レンガ。
これは全て、
9日目のポンガーラの煮炊きのため。

9日目、その年私が訪れたのは、
5キロ以上に及ぶという煮炊き行列の、
本当の端っこの部分ですので、
より寺院に近い地域では、
それこそ足の踏み場も無いほど
びっしりと
この即席の釜と女性で溢れるのだそうです。

男性たちはこの日はサポートに徹していて
オートリキシャも
無料で稼働しているものもありました。

他にも、その夜中に男の子たちの行進があったり、
翌朝未明に多くの女性たちが帰路に着いたりします。
当時の職場では翌日、
ポンガーラに参加した女性たちから
ポンガーラやテラリ(ポンガーラの供物の一種で、テラリの葉にくるまれている)
をいただきました。

祟る獰猛な女神

テイヤムのムッチローットゥ・バガワティにしても
ポンガーラのカンナギにしても
どちらかといえば、おどろおどろしい
激しさばかりが
印象に残ります。

お寺で描かれる
バドラカーリー女神の砂マンダラでは、
矛や盾などに加え、
屠った悪魔の首も手にしています
(私が習った歌にも、そうした描写があります)。

吉祥文様を描く歌

ケーララの女神は、
やさしげな母の顔よりも、
むしろ祟る獰猛な女の顔を
標準にしているようです。

元々南インド、ドラヴィダ系の人々は
母系社会であり
女性が敬われていた…
現在も比較的女性の地位が高い
という風に言われる事もありますが、
現代社会を見ていて
実際にそう感じる事は稀です。

女神のおどろおどろしさ
という点では、
北インドも共通しています。

では、そうした女神が、
一般の人々にとってどんな存在なのか?というと、
今も私は、その答えを見つけられていません。

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