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スムルティの妊娠出産手記④

 
 
 
 
 
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Smriti Chanchani(@dhoop.chhaon)がシェアした投稿

決断の時が迫っていた……。

出産まで数週間を切って、大きな医療上の決断をいくつもしなければならなかった。34週目のエコーで、赤ちゃんが胎児発育不全である兆候が見られた。胎児発育不全は、原因は解明されていないものの、母体が高血圧や妊娠糖尿病の場合に、より起こりやすいのだという。翌週の超音波検査で、胎児発育不全であることが確定した。それからも胎児モニタリングと血圧検査のために、何度か緊急通院をした。

この時点で、助産師も産婦人科医も同じことを言った。38週で出産を誘発した方がいい。胎児発育不全の赤ちゃんはこの週の後は外の世界にいた方が生き延びる確率が上がるという統計があるのだ。その臨界点が38週だった。ここで問われたのは、慎重を期して安全を取り病院に行くか、それともバースホームに行くか。オプションその1は、病院に入院して、出産を人工的に誘発するピトシンの点滴を受け、産婦人科医の監督の元、自然分娩をめざす、ということ。これは医者が「臨床疲労や胎児仮死の兆候が無いか、鷹のように見張る」ということで、もしもの時には急降下してきて帝王切開を行う。オプションその2は、バースホームに滞在し、より自然なやり方で誘発をこころみること(ミソプロストールやピトシンの投与の選択肢もあり)で、病院への転院も視野に入れつつ自然分娩に挑戦することだった。

ここまで、経験豊富な産婦人科医の助言をもらいながら、助産師には長時間相談に乗ってもらうことで心身の調子を調えることができたのは、本当に幸運なことだった。彼らがただ事実を並べることで、私たち自身の決断を促してくれたことには、ただただ感謝するばかりだった。(多くのママ友だちは、選択の余地など無いように感じたと話してくれていた)

私の両親や、心配してくれる大勢の友人たちが、私たちがより安全な選択肢を取ることを望んでいることは分かっていた。ここまでの数ヶ月のマタニティークラスや、助産師、医師、両親の友人たちとの会話を通して、病院で医療的な補助を受けた出産と、自宅に近い環境での自然分娩、それぞれの本当の利点と危険性を検討してきた。



最初に初めて訪れた時から、バースホームでは本当に家にいるような気分になれた。リラックスできて、誰かの家のように気安く、お喋りや見知った人々に囲まれて。やがて分かって来たのは、たとえば力が湧き出てくるような静かな環境、すぐ傍に出産を支えてくれる仲間がいること、出産をする体勢を変える自由、こういったシンプルなことがどんなに身体と、出産の結果に良い影響をもたらすか。適切な臍の緒の切り方(※出産直後ではなく、胎盤から赤子への血液の供給が終わってから切る)がどれだけ赤ちゃんのためになり、「黄金の時間」に肌を触れ合わせることがどれだけ母体の、授乳や赤子との絆に必要なホルモンを刺激するかを学んだ。

そして、病院の環境が、そのデザイン(あるいはその欠如)ゆえに、時に出産の結果に影響を与えてしまうことも見えてきた。病院がもっと、これから出産しようという母親のニーズを考慮してデザインされていたらいいのにと思った。たとえば、部屋はもっと冷たくない、家にいるようなデザインで、暗めの照明に、動き回れる空間、それに痛みを緩和させるハイドロセラピー(水治療法)の選択肢もあるといい。……検査機器はもっと静かに、威圧的ではない風に、そして妊婦が動き回りやすいように、デザインできないものか。適切な臍の緒の処置や「黄金の時間」に肌を触れ合わせること、両親の腕の中にいる赤子を観察することが当たり前になるべきではないのか? 私の心配は、そうした環境では自分が多少の、あるいはたくさんの医療補助を必要とするだろうことが分かりきっていたからだ。

帝王切開は世界的に増えていて、それはインドでも同じだ。それを必要とする母親にとって、これは命を救う大切な選択肢だ。けれども帝王切開の増加の理由はそれだけでは無い。医者の多忙さとか、医療従事者への奨励費だとか、訴訟を恐れるがゆえに過剰に慎重になっていることなど。帝王切開がなぜ「新しい常識」になりつつあるのかはややこしい問題であって、より大きな問題、根源的に自然な過程の過剰な医療化にも関わってくる。単純化や一般化をしすぎずにこれについて語るのは難しいし、私はただのひとりの個人であって、出産という体験をしたのも一度きりだ。それでも、これは社会として取り組むべきことだと感じるし、より深く探究していく価値があると思う。

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