🟡 3/29(金)『女たちの音づれの夕べ~パロミタ友美・佐藤二葉の二人会』 🟡

スムルティの妊娠出産手記②

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Smriti Chanchani(@dhoop.chhaon)がシェアした投稿

■4−6ヶ月目

異常検査の結果が出て、血圧が要注意だった。私たちは少しずつ友人や家族に報告をしていった。愛と祝福は、特に食べ物の形を取って川のように流れ込んできた。チョコレート・ケーキ、ピクニック・バスケット、プリヨーガーレーの混ぜ菓子、ムング豆のドクラ(お菓子)。絵の具や絵筆、瞑想についての本、出産準備やベイビー・ケアの本も贈られた。生まれてもいないのに既に愛されている赤ちゃんのための服も大量にいただいた。この忙しない時代に、手縫いや刺繍の入った服、手編みのニット・ブランケット、手ずから描かれた絵などを贈られてきたのは、殊更に特別感を増した。代々使われてきたゴディユン(ゆりかご)もやって来た。自分の子どもが、祖父が眠ったのと同じゆりかごで眠ることになるというのは、特別な感慨をもたらすものだ。友人のニティヤは、私が必要だと認識すらしていなかったすべてのものを用意してくれた。友人たちや家族の支えがあまりにも強力で、私はただ、めいっぱいに腕を伸ばして謙虚に受け入れればいいのだと、自然と教えられた。

マタニティークラスは全く新しい世界を私たちの前に押し広げた。出産の準備、パートナーとのコミュニケーション、安全な自然分娩とはどういうものなのか。医療介入の長所と短所。それが必要なのはどんなときか? 必要でないときは? どんな出産を選ぶのかを決めるための学び。週末にクラスがあって、平日はその前の週末に習ったことを更に深掘りしていくために費やされた。午後の昼寝の時間をフィットネス・クラスに奪われたのは辛かったけれど、それはそれは気持ちの良いものでもあった。

このすべての過程で、ラームはずっと動じず、手を握っていてくれた。私の心配をし、面倒を見て、更にいろいろなことを請け負ってくれた。私は時々自分のスタジオに抜け出して、完全にひとりの時間を持った。この小さな余裕の窓が、私が自分自身から離れず、日に日に鮮明になる感情を観察し、感じきることを許してくれた。喜びと興奮、不安と恐れ、かつて日常だったひとりの時間の喪失。



私の身体は変化し、感情は激しさを増した。それはこれから何層にも渡って脱ぎ捨てていくことになる皮膚の予兆でもあった。

24週目のあたりで、おなかの震えを感じるようになり、自分の内側で生命が育っているのだという実感がはっきりと出てきた。変化は、思い返して懐かしむ分には素晴らしいものだけれども、当時は丸々と太った無気力な毛虫が繭に包まれているような気分でとても居心地が悪かった。変化は痛みを伴い、気力を奪い、そして恐ろしい。自分自身の身体と、時間と、感情のコントロールを失う。深い喪失の悲しみ、未知のものへの恐怖、怒り、脈打つ苛立ちをこの頃は感じていた。この頃、ペマ・チュードゥンの言葉が耳の奥で響いていた。

「変化に抗うとき、それは苦しみと呼ばれる。しかし完全に身を任せて抵抗することをやめ、自らの状況の根拠の無さを受け入れ抱きしめて、ダイナミックな変化の性質に安らぐことができたとき、それは悟り、あるいは本来への、根源的な善性への目覚めと呼ばれる。」

……そういうわけで、何ひとつ以前と同じでは無いと感じたとき、時には意識的に、また時には無意識的に、肉体と一体化した自分自身から私を切り離し、この変化を観察している私と繋がった。ここで私はあらゆる分類……過去や未来、頭の中にある物語といったものを、ほんの数瞬の間だったとしても、捨て去っていった。

このとても深く肉体的な体験によって、私は微細な身体、あるいは微細な意識に何度も何度も繋がる瞬間を得たのだった。自分の息と、心臓の鼓動がより自覚されるようになった。麻痺した指、張ったお腹、ぐらつく骨盤、そのすべてが、人間の生命を創造せんとする超越知性と繋がりはたらく、この身体という容れ物への鋭敏な自覚をもたらした。私の小さな頭ではこの創造をする知性を推し測ることなどできなかった——心臓、背骨、耳、目、動脈、行き渡る血管、手足、筋肉、消化器官、脳……そのすべてが精密に展開していく。

言い忘れたかもしれないけれど、これらはすべてパンデミック、コロナ禍のさなかに展開していった。このことはごくシンプルに、ただ生命の不思議と死の確かさをより鮮明にした。

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