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現存する唯一のサンスクリット劇・クーリヤッタム

クーリヤッタムは、現存する唯一の、
サンスクリット語劇の伝統です。
2008年にはユネスコ世界無形文化遺産に制定されています。

かつてはインド全土で
サンスクリット劇が演じられていたと考えられますが、
今も伝えられているのはこの形式だけです。

「芸能の書」とクーリヤッタム

サンスクリット語劇には、ナーティヤ・シャーストラ(芸能の書)などに示された、
いくつかの決まり事があります。

たとえば、王侯貴族やバラモン(僧侶階級)の男性は
サンスクリット語を話しますが、
女性や下層の者はプラークリット(もしくはアパブランシャ)という、
サンスクリットの転訛した言葉を話します。

また、戦いや死の場面は直接表現されず、語りで表現されます。
前者はクーリヤッタムでも踏襲されていますが、後者は特にされていません。
(…と、メモしてあるのですが、ちょっと出典が見つかりません。
多分、間違いではないと思います。すみません)

このように、正統とされる範に必ずしも忠実であるわけでは無いようです。
もっとも、古典演劇論については
インド演劇論者たちの間で色々な研究がされているようなので
(地域による独自性を認める記述についてなど)、
ここでは深入りせずにおきましょう。

クーリヤッタムの特徴

クーリヤッタムの語りには、独特の節回しがあります。
お能を思い出していただくのが、一番分かりやすいかと思います。
長母音を引き延ばしてアクセントを置く、少々鼻にかかったような、
それでいて喉が開いていてよく響く、甲高い声。

しかし非常にケーララ的で、
ケーララ人の熱弁を限りなくリリカルに、美しく研ぎすましていくと、
このようになるのかも、とも思わせられます。

一見するとカタカリに似ていますが、
かなり違う趣の芸能だということは、一度でも両者を観たことがあれば、
すぐに分かるかと思います。

パッチャ(緑面のヒーロー)からは分かりにくいかもしれませんが、
他の役柄を見れば、化粧の仕方からして、相当に違います。

カタカリでは役者は喋らず、歌手が詩を歌うのでですが、
クーリヤッタムでは役者が自ら語るし、歌はありません。
伴奏は大きな壺太鼓ミラーヴ、そしてイダッキャという、多くの音程を出せる鼓。
それからクリターラムという小さなシンバルが入ります。

クーリヤッタムの一人芝居

また、チャーキヤールという道化役による語りものの一人芝居では、
チャーキャールがサンスクリット詩節(シュローカ)を唱え、
それを現地語であるマラヤーラム語で風刺や時事問題をからめて解説していきます。

ぱっと聞くと、まるで、オヤジがぐだぐだ喋っている
ようにしか聞こえないぐらいですが……
この、朗詠の口調から普通の話し口調への自然な展開が、
これらが地続きのものであることを証明しているのかもしれません。
少し、落語を思い起こさせるようなところがあります。

また、ナンギャールクートゥという
女性(ナンギャール=元はクーリヤッタムの女性役者を意味する)一人によるパントマイム劇もあります。
時折、サンスクリットのシュローカム(詩節)が
リズムを取るターラム係によって、
クーリヤーッタム・スタイルで詠唱されます。

ナンギャール・クートゥは一度は伝承の途絶えたものを復興させたようで、
河野亮仙「カタカリ万華鏡」(1988年)の時点では絶えたものと記されています。
この記事では「ニルマラ・パニッカルが復興において大きな役割を果たした」とあります)

ナンギャールクートゥは、日本では入野智江さんが時折パフォーマンスをしてらっしゃって、また、伴奏の壺太鼓ミラーヴや、イダッキャも教えられています。

一つ留意しておきたいのは、
これは必ずしも、「古い形がそのまま残っている」というわけではありません。
インド伝統は、むしろ伝統を受け継ぎながらも
積極的に本来の姿、古を発掘していこうという姿勢に富んでいます。
日本のように、古い形を千年でも保存していくような文化の方が、
むしろ貴重だと考えた方が良いかもしれません。

古を求めて発展させる~インド芸能は「思い出され」て進化する

オッタン・トゥッラル

ここでもう一つ紹介しておきたいのは、オッタン・トゥッラルです。

18世紀、偉大な詩人、クンチャン・ナンビャールが創始したと言われています。
伝説によれば、この詩人は
チャーキャール・クートゥのためにミラーヴを叩いていました。
しかしその最中に居眠りをしてしまい、
チャーキャールから笑いものにされてしまいます。

これに怒り、自ら芸能を創出して
チャーキャール・クートゥの舞台の向かいで上演した所、
観客は軒並みこちらへ流れてしまった、という事です。
プラーナ(古事記のようなもの)の伝説に材を取りながらも、
社会風刺を織り交ぜ、使用語はシンプルなマラヤーラム語。

言語だけではなく、その言葉の発し方も、
クーリヤーッタムよりも、民衆向けという感じがします。
単純に、楽しい、という感じで、私などにも言葉の認識がしやすいです。

しかし発声の基本のところは、たとえば上のラクシュマナの言葉とも共通したものがあるように思えます。
実際、ナンビャール家の出身でミラーヴを担当していたのだから、
クンチャン・ナンビャールは当然ケーララの音楽芸能に通じていたはずで、
また現代でも称揚される詩人であるぐらいだから、
その人が創始した芸能は、大衆的でありながらも
洗練されたものであるに違いないのです。

現代演劇への影響

更に、現代演劇、ソーパーナ劇団の作品より。

カーワーラム・ナーラーヤナ・パニッカル率いるこの劇団の演目では、
ケーララ芸能を最大限に反映させていて、
普段の訓練にも伝統武術カラリパヤットなどが取り入れられています。
この映像では限られた場面しか出て来ませんが、
クーリヤーッタムの表現手法も多く採用されており、
伝統と現代芸術の融合の一つの形を見ることができます。

日本ではSPACの公演を観た時に、
このパニッカル劇団とも共通するものを感じました。

SPAC「マハーバーラタ:ナラ王の冒険」池袋公演を観劇してきました。

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